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【Aiの視座 第2回】ブロックチェーンと脱・消費資本主義への道

特集 Aiの視座 -これからの世界の見つめ方-

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感情なきAIの優れたマッチング能力

ーー前回、「AI+ブロックチェーンで、個人の時代が来る」というお話がありました。要するに、ブロックチェーンにストックされたさまざまな個人情報をもとに、AIがその個人にとって有益な判断を自動的に下してくれるようになるーーという未来予想ですよね。それによって、他にどんな可能性があるとお考えですか。

 

 例えば、マッチング能力が高まることによって、サービスの享受/提供に大きな影響を与えることが考えられます。

 

 

ーーAI+ブロックチェーンの利点として、間にマージンを取るような企業が入らず直接取引きができるので、儲けが大きくなるというご指摘がありました。マッチングということでいうと、例えば、派遣会社とかも要らなくなってくるのかもしれないですね。

 

 そうですね。これからは個人事業主が増えていくはずなので、そうした人々が働きやすい環境を作る上で、AI+ブロックチェーンはすごく重要な存在になっていくはずです。今は仕事のマッチングサイトとかの機能もまだまだという感じですが、これからはもっと使えるようになっていくでしょう。個人に対して、企業から勝手にスカウトがくるなんてことも普通になるのでは。あるいは、企業間の提携なども、Win-Winな状態をAIが判断してくれるので、もっと容易になるでしょう。

 

 

ーーAIによるマッチングが、人間の判断より優れている点は、具体的にどのへんにあるとお考えですか。

 

 仕事相手として適しているか否かは、価値観の近さや、あるいは相性の良さなどに左右される部分が大きいですよね。でも、そういったところというのは、意外と人間には見えているようで見えてないことが多いものです。感情によってブレるし、その人についてのデータが増えれば増えるほど、判断材料が多すぎて、むしろ分からなくなっていくので。

 

 

ーーその点、AIはデータが多ければ多いほど有利ですものね。

 

 その通りです。だから初対面の印象が最悪で、「うわ、こいつとは合わないだろうな」と思った相手とだって、もしかしたら……ということはあり得る。

 

 

ーー確かに、相性悪そうと思った相手との仕事が、意外にも上手く行くことって時々ありますものね。

 

 そうなんですよ。趣味やコミュニケーションの仕方が違うだけで、仕事における方法論は似ていた、なんてことはよくあることです。AIは感情で判断しないので、無駄な先入観を挟むことはありません。どこまでもフラット。ゆえに、人間からすると意外な、でも実はベストなマッチングを実現する可能性が高いのです。

AIにも得意/不得意がある

ーーとなると、最初にきちっとしたAI+ブロックチェーンのシステムを構築し、それを用いたプラットフォームを提供したところが一人勝ちするのでしょうか? そこのブロックチェーンに個人情報を貯めておけば、あらゆるサービスにおいて、最適の選択をしてもらえるみたいな。

 

 いや、むしろプラットフォーマーがたくさん出てくる可能性の方が大きいのではないでしょうか。サービスの内容や、求める機能によって、差別化されていくように思います。AIというと、盛んに「シンギュラリティ(技術特異点)」が話題にのぼります。2045年に訪れると言われている、いわゆる機械が人間を超える瞬間のことです。その時点で、今ある人間の仕事のほとんどがAIに代替されるのでは……と言われています。ただ、このシンギュラリティというのが曲者なんです。その時点でものすごく汎用性の高いAIが生まれて、何でもできちゃうみたいな認識が広がっていますが、そうではないんですよ。AIにも個人差みたいなものがあって、得意/不得意というのがあるのです。

 

 

ーーつまり、1つの大きなところに全部載ってきてしまうというよりは、それぞれの内容に特化したプラットフォームが複数できて、個人はそれを使い分けるみたいなイメージでしょうか。

 

 そちらの方が現実的な発想だと思います。よく将棋や囲碁でAIが人間に勝ったから、イコール全てにおいて人間を超えるみたいなことを言うAI脅威論がありますが、そういうことはありませんからね。

 

 

ーー得意/不得意があるなんて、AIには人間くさい面もあるんですね。

 

 どんどん「個性」が出てくるという意味においては、AIは発展していくごとに、より人間くさくなっていくのかもしれないですね。

AI+ブロックチェーンが作り出す、新たなマネタイズ領域

ーーここまでお話を伺ってきて、AI+ブロックチェーンは、今の世界において「当たり前」とされている前提の部分から変えてしまい得る存在であることが分かってきました。

 

 今の社会の前提になっている「消費資本主義」を終わらせるくらいのインパクトを持っていると思います。ちょっと家電を例に説明します。僕の祖父の家にあるクーラーって、30年選手なのですが、もうガンガンに効くんですよ。でも、最近の家電全般はすごく壊れやすいですよね。というより、むしろ早く壊れるように作られている。

 

 

ーー確かに今の家電は、昔のものとは比べものにならないくらい高性能ですが、寿命は短いですよね。家電とは違いますが、それこそApple社のiPhoneなんて、数年で壊れることを承知の上でみんな使っていますから。

 

 対して昔の家電は、一生懸命、壊れない、しっかりした物を作ろうという意識で作られていました。でも、そうやって頑張ってきた会社も気付くわけです。あれ、このままじゃ儲からないぞ、と。それからは、買わせないと商売として成り立たないから、壊れる物をどんどん作って、どんどん売っていくようになった。私たちは、そうした消費資本主義を前提にした社会を生きているわけです。

 

 

ーー早く壊れる代わりに、例えばエアコンなら、人のいる場所だけを冷やす、みたいな機能面で付加価値をつけていく感じですよね。

 

 でも、これからは違う可能性が出てくると思います。IoTの時代に突入している現在、家電も含め、あらゆる電子機器がインターネットに接続されつつあります。そこにAIとブロックチェーンが載ってくることで、例えば、僕はこういう家電を持っていて、それはあとどのくらい使えますよ、というようなことが可視化される未来もそう遠くないでしょう。その時には、「長持ちすること」が、1つの価値として見直されるはずです。そうすれば、必ずしも壊れるものを作って、どんどん新しいものを買ってもらうのではなく、それが長持ちすればするだけ、作ったメーカーにお金がバックされるといったエコ的な発想も生まれてくるはずです。

 

 

ーー長持ちすることで、メーカーにインセンティヴが入る仕組みが生まれる、と。

 

 これまでマネタイズとは無縁だった部分で、マネタイズできるようになるわけです。こうした考え方は、スマートニュース株式会社の代表取締役会長・鈴木健さんの著書『なめらかな社会とその敵』(勁草書房、2013年)などでも言及されていますが、そうした消費資本主義からの卒業という流れが生まれるなら、そこにはブロックチェーンが大きく絡んでくるはずです。お金的に、フロー型の資本主義から、ストック型の資本主義になっていくのではないでしょうか。それこそ前回お話しした、ブロックチェーンに貯めた個人情報を金銭化できるようになるというのも、ストックの発想ですからね。

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 近年、盛んにメディアを賑わしている「AI(人工知能)」。日々新たな関連本が刊行され、ネットや雑誌でAIの文字を見ない日はないに等しい。しかし、「こんなすごい未来が!」といった賞賛から、「機械が人間の仕事を奪う」といった脅威論まで、さまざまな意見が入り乱れ、正直「何を信じたらいいのやら……」という人も少なくないのでは。そんなAIバブルの現在を迷わず生きるために必要な、現実的かつ柔軟な発想とは? 開発研究者の立場からAIの現実を綴った『誤解だらけの人工知能 ディープラーニングの限界と可能性』(松本健太郎との共著、光文社新書、2018年)の著者・田中潤氏に話を聞いた。(聞き手・辻本力、Revie編集部)

【プロフィール】

田中潤(たなかじゅん)
Shannon Lab株式会社代表取締役。アメリカの大学で数学の実数解析の一分野である測度論や経路積分を研究。
カリフォルニア大学リバーサイド校博士課程に在籍中にShannon Labを立ち上げるため2011年帰国。
人工知能の対話エンジン、音声認識エンジンを開発。開発の際は常にPythonを愛用。
編著に『Python プログラミングのツボとコツがゼッタイにわかる本』(秀和システム)がある。

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